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老老介護とは?現状・問題点・支援制度を徹底解説

2025.05.14

老老介護とは?現状・問題点・支援制度を徹底解説

近年、高齢の方が高齢の家族を介護する「老老介護」が増加しています。介護する側も介護される側も高齢者であるため、様々な問題が生じています。

「老老介護によって実際にどのような問題が起きているの?」「老老介護の解決策はある?」などと気になっている人もいるでしょう。

そこで本記事では、老老介護の現状や課題、利用できる支援制度などについて解説します。老老介護に直面している方や将来に備えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

老老介護とは?定義と現状

老老介護とは、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護する状況のことです。親子・夫婦・兄弟姉妹など様々な関係で老老介護が発生しています。

なお、75歳以上の高齢者が75歳以上の高齢者を介護している状態は「超老老介護」と言います。

老老介護の現状

実際、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、要介護者を介護している人は60歳以上が大半であることが分かっています。

 

65歳以上の要介護者を
介護している人の年齢(同居)
割合
40歳未満 1.3%
40〜49歳 5.1%
50〜59歳 16.4%
60〜69歳 28.9%
70〜79歳 29.3%
80歳以上 18.9%

 

上記の表によれば、65歳以上の介護者は全体の約77%にも上ります。ちなみに、「超老老介護」も増加傾向にあり、同調査により約35.7%であると判明しています。

参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省

老老介護が起こる要因

老老介護が起こる要因としては、以下のことが考えられます。

 

  • 高齢化社会の進行
  • 介護期間の長期化
  • 若い世代の流出

 

一つ目の要因は、高齢化社会の進行です。総務省統計局の調査によれば、日本の人口のうち約29.1%が65歳以上。高齢者がかなり増えたことにより、若い世代による介護が難しくなっていると考えられます。また、平均寿命が伸びた結果、高齢者同士の夫婦世帯が増えていることも要因の一つでしょう。

二つ目の要因は、介護期間の長期化です。以前は介護期間が短かったのに対し、現在は医療の発達により平均寿命が延び、介護期間も長くなっています。介護が5年以上続くケースも少なくありません。

三つ目の要因は、若い世代の流出です。地域によっては高齢化率の差があり、過疎地域ほど老老介護の割合が高い傾向にあります。若い世代が都市部へ流出し、高齢者だけが地方に残されるケースが増えています。

老老介護の問題点

老老介護の状態に陥ると介護する側も高齢であるため、若い世代が介護する場合と比べて多くの問題が生じやすくなっています。主な問題点として、以下の3つが挙げられます。

  • 介護者の健康状態が悪化する可能性がある
  • 経済的な負担がかかる
  • 社会から孤立しやすい

介護者の健康状態が悪化する可能性がある

一つ目の問題点は、介護者の健康状態が悪化する可能性があることです。高齢の介護者自身も健康上の問題を抱えていることがあり、持病を持ちながら介護をするケースも少なくありません。介護による身体的・精神的な負担が影響して、介護者の健康状態をさらに悪化させることも考えられます。

具体的には、腰痛や関節痛などの身体的な症状が挙げられます。高齢者の身体機能は若い世代と比べて低下しているため、介助の動作による身体的な負担を受けやすいです。

また、睡眠不足に陥る可能性もあるでしょう。夜間に何度も起きて介護すると十分な睡眠が取れないので、日中の疲労感が蓄積されることもあります。睡眠不足が続くと、免疫力の低下や認知機能の低下を招くこともあるでしょう。

さらに、精神的な負担によって「介護うつ」になってしまうケースもあります。このような健康リスクを予防するためには、介護保険サービスを積極的に活用し一人で抱え込まないことが重要です。また、定期的な健康診断や専門医への相談も検討しましょう。

経済的な負担がかかる

二つ目の問題点は、経済的な負担がかかることです。高齢者は、主な収入源である年金から生活費や介護費用を支払わなければなりません。介護保険サービスを利用する際の自己負担分や保険適用外のサービス費用が家計を圧迫する可能性があります。

生活保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用は1ヶ月あたり平均約9万円であることが分かっています。介護保険が適用されるサービスを利用しても食費や日用品代は自己負担であるため、年金や貯金から捻出しなければなりません。

また、介護費用だけでなく医療費も高額になることが考えられます。高齢者は医療機関を受診する機会が多い傾向にあるため、医療費の自己負担分が家計を圧迫することも考えられます。

経済的な負担を軽減するためには、利用可能な公的支援制度を把握し適切に活用することが大切です。また、早い段階から将来の経済計画を立てておきましょう。

参考:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険文化センター

社会から孤立しやすい

三つ目の問題点は、社会から孤立しやすいことです。介護に時間を取られることで外出の機会が減少し、友人や知人と交流する機会が減ってしまうことが考えられます。また、介護の負担や疲れから、地域の行事やイベントに参加する余裕がなくなるかもしれません。

外出の機会が減ることで地域社会との接点が失われ、情報不足や孤独感の増大につながります。特に、配偶者を介護している高齢者は、それまでの主な社会的交流相手が介護を必要とする状態になったことで、さらに孤立が深まりやすいです。

社会的孤立は精神的な健康にも悪影響を及ぼし、介護うつや燃え尽き症候群となる恐れがあります。また、緊急時の対応が遅れる可能性もあり、安全面でも懸念があります。

孤立を防ぐためには、地域包括支援センターや介護者支援団体などを活用し、同じ立場の人との交流の機会を持つことが大切です。また、ICTを活用した見守りサービスも有効です。

老老介護の負担を軽減する具体的な方法

老老介護の負担を少しでも軽減するためには、サービスの上手な活用と介護者自身の健康管理が重要です。ここでは、負担軽減のための具体的な方法を紹介します。

介護サービスの上手な活用方法

老老介護の負担を減らすには、まず介護サービスを活用してみましょう。介護サービスを最大限に活用するために、以下の方法を試してみてください。

  • 訪問介護と通所介護を組み合わせる
  • ショートステイを利用する
  • レスパイトケアを利用する

訪問介護と通所介護を組み合わせて利用することで、介護の負担を分散させることが可能です。訪問介護では入浴や排泄などの身体介護を専門のヘルパーに依頼でき、通所介護では食事やレクリエーションなどのサービスを受けられます。特に時間がかかっている介護を、訪問介護サービスや通所介護サービスなどにお願いするのもおすすめです。

ショートステイを定期的に利用するのも良いでしょう。例えば、月に1,2回ほど2〜3日程度のショートステイを利用することで、介護者が自分の時間を作れます。空いた時間を使えば、趣味や友人との交流に宛てたり健康診断の受診をしたりと、息抜きをすることも可能です。

レスパイトケアも積極的に活用しましょう。レスパイトケアとは、介護をする側が一時的に介護から離れ休養を取るためのサービスです。心身のリフレッシュにも繋がります。レスパイトケアサービスを提供している自治体もあるので、地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。

健康管理の方法

老老介護においては、介護者自身の健康管理も非常に重要。健康管理には、以下の方法がおすすめです。

  • 適度に運動をする
  • 食事の栄養バランスに気を付ける
  • 十分な睡眠を確保する
  • 息抜きをする

適度な運動を心がけましょう。長時間にわたって同じ姿勢で介護をすると、腰痛や肩こりの原因となります。隙間時間を利用して、近くをウォーキングしたりストレッチしたりするのがおすすめです。

食事の栄養バランスに気を付けることも大切。介護に忙しいと自分の食事が簡素になりがちですが、タンパク質・ビタミン・ミネラルなどをバランスよく摂りましょう。時間がない場合は、宅配サービスを利用するのも一つの方法です。

また、十分な睡眠も健康維持には欠かせません。夜間の介護で睡眠が断片的になりがちですが、できるだけまとまった睡眠時間を確保してください。例えば、日中のデイサービス利用中に仮眠を取る、家族と交代で介護をして昼寝をするなどの方法があります。

息抜きの時間も必ず取りましょう。趣味の時間を持ったり友人との交流を続けたりと、好きなことに時間を使えばストレスの発散にもなります。同じ立場の介護者との交流も有効です。介護者の集いや家族会などに参加することで、「自分だけが大変な思いをしている」という孤独感の解消にも繋がるでしょう。

老老介護を支援する公的制度

老老介護を支援するために様々な公的制度があります。ここでは、特に重要な二つの支援制度について解説します。

介護保険サービス

介護保険サービスとは、要介護認定を受けることで介護保険が適用されるサービスのこと。

65歳以上の方(第1号被保険者)や40〜64歳で特定疾病がある方(第2号被保険者)が対象となります。要支援や要介護の認定を受けると、自己負担1〜3割でサービスを利用可能です。

介護保険が適用されるサービスは、大きく分けて「在宅サービス」と「施設サービス」があります。

主な在宅サービス 主な施設サービス
・訪問介護(ホームヘルプサービス)

・訪問看護
・通所介護(デイサービス)
・短期入所生活介護(ショートステイ)

・特別養護老人ホーム(特養)
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院

 

なお、要介護認定の申請は市区町村の介護保険窓口で行えます。認定されると要介護度に応じたケアプランが作成され、必要なサービスを利用できるようになります。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、高齢者の健康や生活全般について相談できる窓口です。介護・病気・金銭的な問題など様々な相談に対応してもらえます。

また、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門スタッフが配置されているのも特徴の一つ。複雑な内容でも親身に相談に乗ってくれるでしょう。

さらに、地域包括支援センターではケアマネジャーとの連携も行っています。ケアプランの相談・見直し・サービス事業者との調整など、介護保険サービスを適切に利用するための支援を受けることが可能です。

地域包括支援センターの相談は無料。電話や来所での相談が可能です。必要に応じて自宅への訪問も行っています。地域によっては介護者同士の交流会や勉強会なども開催しており、同じ立場の人との情報交換の場としても活用できます。

 

参考:地域包括センターの業務|厚生労働省

将来に備えるための準備と心構え

老老介護に直面する前に、将来を見据えた準備をしておくことが重要です。高齢化が進む日本では、誰もが老老介護の当事者になる可能性があります。事前に準備しておくことで、いざというときの不安や混乱を軽減できるでしょう。

まず、家族間での話し合いが不可欠です。「もしも介護が必要になったら」という仮定の話は避けたい気持ちがあるかもしれませんが、あらかじめ話し合っておくことで心の準備ができます。介護の方針・役割分担・施設入所など、家族全員の考えを共有しておきましょう。

経済的な設計も重要です。介護が始まると収入が減少することが予想されるため、経済面での準備をしておく必要があります。老後の資金計画を立て、介護に備えて貯金をしておくのがおすすめです。また、公的年金や介護保険の仕組みについても調べておくと安心でしょう。

また、住環境の整備も早めに考えておくべきです。バリアフリー化や手すりの設置など、介護しやすい環境づくりを計画的に進めましょう。将来の介護を見据えた住み替えも選択肢の一つです。例えば、階段の多い家から平屋や低層階のマンションへの引っ越しを検討する人もいます。

介護が必要になった場合の選択肢として、介護保険サービスの利用や介護施設への入居も視野に入れておきましょう。どのようなサービスや施設があるのか、どのくらいの費用がかかるのかなど、簡単にでも調べておくのがおすすめです。

まとめ:老老介護を乗り切るために

この記事では、老老介護の現状・問題点・負担軽減の方法などについて解説しました。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」は、少子高齢化が進む日本社会において増加傾向にあります。介護する側も介護される側も高齢であるため、様々な問題が生じやすい状況ですが、適切な支援を受けながら乗り切ることは可能です。

老老介護は決して一人で抱え込むべき問題ではありません。家族やケアマネージャーなどの周囲の力を借りながら乗り切ることが大切です。早めに相談したり支援を受けたりすることで、介護の質を保ちながら介護者自身の生活の質も向上させることができます。